1980年代の名作漫画(アニメ)『めぞん一刻』(高橋留美子氏原作)のまとめサイトです。

深読み!『めぞん一刻』

「めぞん一刻」TVシリーズ

2つの『めぞん一刻』

『めぞん一刻』には、原作コミック(漫画)とTVシリーズ(アニメーション)の2種類があります。

2種類の「実写版」と「完結編の映画版アニメ」もありますけど、ストーリー全体を描いているのは上記の2つです。

高橋留美子氏自身はアニメ化の監督はしないので、別の監督でアニメ化を行っています。

TVシリーズの良いところは、カラーで動きがあって声優の名演技が楽しめるところ。BGMも大変良いです。

名シーンを再現することには非常に成功しています。なので部分的には原作以上に楽しめます。

五代が「響子さん好きジャー!」と叫ぶシーン、響子が五代をビンタするシーン、響子と五代のケンカシーン、キスシーン、他、名シーンが沢山ある作品ですが、それらがアニメーション化されるとさらに楽しめることになります。

ではアニメーションだけ見ていればいいか、というとそうでもなく、絶妙なストーリー展開は原作のほうが圧倒的に素晴らしいです。それは天才高橋留美子氏にしか成しえない仕事であって、セリフが同じであってもニュアンスが違っていたり、ストーリーを少し替えたり、シナリオを付け足したりするだけで、丸で別の作品になってしまうことがあります。

そんなわけで原作を読んでからTV版アニメを見ると、とても楽しめると思います。

日常系アニメとして再現

『めぞん一刻』のアニメ化の仕方は、特殊な効果は使わないで普通にきちんと背景を描いていて、その点ではちょっと退屈するくらいです。

印象的なシーンも夕暮れで電灯が付くとか、その程度の演出にとどまっています。ちょっと極端ですけど、言ってしまえば『ドラえもん』とか『さざえさん』に近い演出ですね。折角アニメーションなのでいろんな演出をすれば良かったのに、と思います。

特に後半の物語が急速に進んでいく場面は、少しだけ恋愛ドラマ風な演出もありますが、もう少し幻想的な演出みたいなのがあっても良かったのでは?という気がします。

『めぞん一刻』って日常系なのは表面だけでファンタジー要素の強い作品だと感じるので、いろんな声色を使い分ける声優の名演技は凄いですが、アニメーションの演出も、もっと大胆にやっても良かったんじゃないかなぁと思います。

BGMはハイレベル

アニメーションは総合芸術なので、音楽も重要な役割を果たします。同時期に連載していた『うる星やつら』の音楽は本当に素晴らしいですね。

『めぞん一刻』の音楽もなかなかハイレベルです。ただ日本風なところが多いので(といっても『うる星やつら』もほぼ日本神話ですけど)テーマソング、特にオープニングは単独で聞けば名曲なんですが、イメージが定まらず手探り状態という感じです。

ただエンディングテーマの来生たかおの「あした晴れるか」が名曲で、そのアレンジで作られたBGMは感情的なシーンでとても効果的に使われています。

『めぞん一刻』は感情的なシーンが名シーンになっている場合が多いので、その中でも緊張感のあるシーンはあえて音楽を入れていなかったりもしますが、感情的なシーンで使われるBGMはとても良いと思います。他にも、喫茶店のシーンでは、シンディのファーストアルバムの曲を使っていて良いです。

視聴者の保護者との戦い(?)

『めぞん一刻』は「ビックコミック・スピリッツ」に連載されていました。これは大人向けの雑誌なので、性的な表現などがあっても特に問題にはなりません。

しかし、アニメーションになってTVで放送されるとなると事情は全然違ってきます。人気の夕方の時間帯は家族だんらんの時間帯にも重なり、小学生が家族と一緒にアニメを見ることになりますから。一緒に見ている親が教育に悪いと思ったら、すぐ問題になってしまいます。

「めぞん一刻」は青年誌に連載されていた割に性的な表現は少く、そこは問題にならなかったような気がします。2回だけあるベッドシーンは割愛されて、間接的な表現になっています。

ただ響子がヤキモチを焼いたり、痴話ゲンカしたりと、その辺りはシーンによっては結構激しい表現になっていて、声優も名演技で思い切りやっているので、クレームはあったらしいです。

そのせいか中盤頃はマリア様キャラになってしまい、原作では思いっきり泣き叫ぶようなシーンも、随分お淑やかになってしまって物足りないですね。響子だけ青い目のマリア様的な描写になっていて、なんだか不自然な気もします。

また、小学生の賢太郎くんがクローズアップされがちです。こちらも視聴者層を意識してあえてそうしたのだと思いますが、賢太郎くんはメインのストーリーとは絡まないので、ストーリー展開がアンバランスになっている所があります。

ただ後半になって物語が急速に動き出すところは、結構しっかりアニメーション化しています。ラブホテルのシーンとか、原作のちょっとブラックなセリフは避けてますが、なかなかスリリングな展開を再現しています。

五代と坂本がソープを梯子して、竹箒で掃除していた響子の前でソープの入場券(?)を沢山落としてしまうシーンがあるのですが、響子がそれを竹箒で集めて火を付けて燃やしてしまうシーンを変更せずにアニメ化したのは英断だと思いますね。

アニメーション化の難しさ

ほぼ同時期に連載されていた『うる星やつら』では、後に世界的評価を受ける天才監督の押井守氏がTVシリーズの前半を担当していました。押井守氏は原作の『うる星やつら』をそのままアニメーションにしたのではなく、かなりシナリオを変えてアニメーション化しました。

高橋留美子氏と押井守氏の合作のようになって、タイプが違うだけに『うる星やつら』にスターウォーズのような壮大な宇宙の要素を付け加えて、世界観を広げることに成功しています。

しかし徐々に押井守氏のカラーが強くなっていき、映画版第二作の「ビューティフル・ドリーマー」は抜け駆け的に作ってしまい、原作者の高橋留美子氏と仲違いすることになってしまいました。でも「ビューティフル・ドリーマー」は1980年代のアニメーション映画の代表作として今でも評価が高いです。

その後、高橋留美子氏はアニメーション化には口を出さない方針に決めたのだとか。

監督が交代して『うる星やつら』は続きますが、出来るだけ原作に忠実になるように作ってします。ただし原作のままだと時間が余ってしまうので、エピソードを書き足して対応しています。そうすると、間延びしてしまったり、キャグの切れが悪くなったりして、落ち着いてしまったなぁという印象です。

『めぞん一刻』も原作に忠実で特にセリフはほとんど変えていません。「ビッグコミックスピリッツ」は「サンデー」よりも一回分のページ数が多いので詰め物は少なめですが、監督が原作の仕掛けを理解しないで(あるいは、自己主張でわざと?)、改変してアニメ化したりする時もあって、焦点がずれてテンションが下がっている場合も多いです。

やっぱり高橋留美子氏自身が監督すれば良かったのに、と思わなくもないですね。

とはいえ、そういった経緯をふまえた上で観ると、『うる星やつら』の時に比べれば、『めぞん一刻』のアニメ化は大分うまく行くようになったと感じます。

「めぞん一刻」アニメ版
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■更新日:2019/08/20

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