『めぞん一刻』と桜

昔から、日本映画や漫画などで、桜は沢山登場してきました。日本の春の象徴ですからね。
『うる星やつら』では、桜をネタにしたエピソードが出てくるなど、わかりやすく前面に押し出しています。アニメーション版では春になると、ずっとサクラが満開です。
高橋留美子先生の作品では、桜は単に春の風物詩というだけでなく、独自の意味を持たせているように感じます。『めぞん一刻』も同じですね。
『うる星やつら』と桜
桜の話は、『めぞん一刻』よりも、同時並行で連載されていた『うる星やつら』が分かりやすいです。『うる星やつら』は完全なファンタジーなので、『めぞん一刻』では見えない世界が描かれていて、兄弟作と見ていいと思います。
巫女のサクラ、坊主のチェリー、など、神道とか仏教に関係づけているみたいです。霊界とのつながりがあるキャラクターです。


チェリーは仏教の僧侶ですけど、神社にいるんですね。江戸時代までは神社と寺院は一緒で、明治時代になって別れたので、『うる星やつら』で一緒になっていても不思議じゃないです。
関係ないですけど、巫女のサクラって、音無響子に似てるような…前髪なんてそのままだし。年齢的に近いからかな?以下は『うる星やつら』で近未来を見に行くエピソードから。このサクラはきっとわざと音無響子に似せてるんでしょうけど、実際似ている気がします。

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『うる星やつら』では、まだ成仏していない霊魂が、よく出てきます。怖い幽霊ではなく、生きている登場人物と同格に描かれています。そして目的を達すると成仏してしまいます。作者の死生観がわかる気がします。第180話は高橋留美子先生がベストに挙げているエピソードですね。

(第180話「ダーリンのやさしさが好きだっちゃ… 」)
桜をメインにしたエピソードで一番有名なのは、第130話「異次元空間 ダーリンはどこだっちゃ!?」ですかね。

<省略>
ラム「おかしいっちゃ、こんな風景はありえないっちゃ。きっとこのあたりの位相偏差値が点数を超えてるっちゃ」
ここで諸星あたるが桜の枝を折ってしまい、位相偏差値のバランスが崩れてラムは異次元空間をさまようことになります。

やっぱり桜は独特の霊力を持っている感じがしますね。
と、ここまで書いてきて、この第130話はアニメ版オリジナルであることに気づきました、笑
これもアニメオリジナルですが、『うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー』も桜をメインに扱っています。前半は良いのですが、後半はいまいち分かりにくい映画ですね。
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『境界のRINNE』と桜
『めぞん一刻』よりもずっと後の連載ですが、「境界のRINNE」の主人公の少女、真宮桜(まみやさくら)は霊が見えてしまう少女です。
「教会のりんね」じゃなくて、「境界のRINNE」です。生死の境界です。死神が主人公でルーミックワールド全開です。神道だけじゃなく、魔女とか西洋の宗教の話も出てきますね。でも神道など日本の宗教の死生観はすごく詳しく描かれています。
真宮桜は『境界のRINNE』のヒロインなのですが、意外と地味な感じで普通の女子高生です。高校生以下がターゲットになっているからか、ヒロイン真宮桜も中学生くらい?と思えるくらいです。

最近の作品だけあって、キャラの完成度が高いですね。主役も脇役も自由奔放に振る舞っていて、それぞれの魅力を出し切っています。
特にこずえちゃんに似た立ち位置にいる鳳(あげは)はビジュアル的には美女だと思います。他のキャラもヒロインよりも魅力的なキャラが多くて、読者の好みがかなり分かれそうですね。筆者も一押しは鳳(あげは)ですね。バカ女っぷりを発揮していますが、それも含めて魅力的です。

アニメ版では、真宮桜もより魅力的に描かれているのですが、アゲハはとても魅力的でヒロインを完全に喰ってしまっている感じですね。他のキャラは高橋留美子先生らしく、コンプレックスがあるキャラが多いのですが、アゲハはルーミックワールドの中でも異色と言えるくらいストレートです。

全体的にまったりとしたギャグ漫画なのですが、主人公は死神です。この世に執着する霊魂を浄霊して輪廻の輪に送るという、高橋留美子先生の死生観がかなり前面に現れている作品ですね。
霊は沢山でてきますが、本当に怖い霊はほとんどいません。深い悩みをかかえているというほどでもなくて、割と簡単に未練を解決して成仏していきます。やっぱり生きている人間とあまり変わらない扱いで、『うる星やつら』のころから変わっていないですね。
一方、『めぞん一刻』のように強い感情をリアルに描いている訳ではないです。逆に感情的になりそうな部分を意図的に抑えていて、ヒロイン真宮桜はどんな怖い幽霊が見えても妙に落ち着き払っています。
でも、たまに感情描写が深くなることがあり、そうすると真宮桜は、何故か音無響子を連想してしまいます。落ち着いているのですが、それがために恋愛のほうはなかなか進展しません。結構めんどくさい性格のヒロインなんです。
主人公の死神りんねは、イケメンで性格も良い高校生ですが、家庭の事情によりすごく貧乏で、学校のクラブ棟に住んでいます。お金のテーマが大きく扱われている所も『めぞん一刻』に似ているかも知れません。

さて、話がずれました。このページは桜の話でしたね。探してみましたが『境界のRINNE』には桜の描写はあまり出てこないようです。ちょっと意外でした。
セカンド・ラブ (中森明菜)
(ストリーミング,MP3,CD)
星5つ中の5 (1件のレビュー)
『めぞん一刻』と桜
『めぞん一刻』では桜は、どんな扱いかというと、音無惣一郎の命日に満開になっています。やっぱり桜は霊界とのつながりを象徴しているみたいですね。

平安時代は、サクラは霊木だったそうです。管理人さんの竹箒も奈良時代は神事に使われていました。
ただ、原作ではアニメ版のように派手に桜を前面に押し出すことはしていません。
でも第100話「桜迷路」では桜はとても印象的に使われています。このエピソードのためにとっておいたんでしょうかね。喪服(もふく)姿の音無響子が魅力的に描かれているちょっと不思議なエピソードです。
五代が内定した会社がつぶれてしまい就職浪人が決まった春、響子は例年通り惣一郎の墓参りに行きます。その帰りにバイト先の保育園によって五代を励まそうとしますが、惣一郎を引き合いに出したので余計落ち込ませてしまいます。
五代が「就職したらプロポーズできる」と思っていた矢先の話。二人は無言で神社の桜並木を散歩します。五代はこのままでは響子を見失ってしまう、と考えながら歩いていて、本当に見失ってしまいます。
で、再会した時の音無響子がこの絵ですよ!すごいインパクトですね。

この年は、髪を結わずにお墓参りしたようですね。お墓参りのシーンは描かれてはいませんが、音無家に立ち寄っている時からずっと髪を下ろしてます。ということはロングで喪服なのはこのエピソードが初めて。このエピソードがアニメ化されてなくって、カラーの絵が無いのは、とても勿体無いと思います。
それにしても、惣一郎って成仏していたのかな? 『うる星やつら』の死生観とか考えると、そういう考えがあってもおかしくないですけど、『めぞん一刻』はリアルなファンタジーなのでそこは直接触れてはいません(避けている)。 セリフの中にも「成仏」と出てくることは一度もありません。
いずれにせよ、『めぞん一刻』のメインストーリーの最後のコマでは、桜が舞っています。

(第160話「桜の下で」)