1980年代の名作漫画(アニメ)『めぞん一刻』(高橋留美子氏原作)のまとめサイトです。

深読み!『めぞん一刻』

音無惣一郎

音無惣一郎は、音無響子の亡き夫です。惣一郎が講師でいった女子高校に響子がいました。その時惣一郎は27歳なので、10歳近く年の差があるんですね。27歳なら十分若いですけど。

二人は駆け落ち同然で結婚するのですが、結婚して半年で惣一郎は亡くなってしまいます。死因は不明ですが、響子が病院に駆けつけた時には既に亡くなっていました。最後の言葉も交わすことが出来ないほどのショッキングな別れ。響子はもちろんですが、惣一郎も悲劇の主人公のはずなんです。

響子の惣一郎に対する想いや思い出は作中に沢山出てくるのですが、惣一郎からみた響子についてはあまり書かれていないんです。『めぞん一刻』を深読みするなら、凄く大事だと思います。

音無 惣一郎(おとなし そういちろう)のプロフィール

ネーミングですが、後半で女子高校の場面でさかんに出てくる「おとなしそう」というのが語源でしょうか。

「おとなしそう」「いちろう」ってことで。(でも、TV版が「おとなしそう」って使い過ぎなので、逆に何かあるのかな?という気もしますが)

惣一郎の「惣」の字は、惣菜の「惣」です。食べ物が好きで、第52話「配達された一枚の葉書」では、日記に食べ物のことばかり書いています。

また第52話では、響子と初めて会った日付が分かります。4月10日です。春と言えば桜。そして惣一郎の命日です。 日付は出てきませんが、4月11日の前後と言われています。っということは、もしかして実は初めて出会った日が命日なの?という妄想すら出てきます。そうだったら、すごい話ですね。

『めぞん一刻』のインスピレーション元の一つ「メリーウィドウ」では、結婚してしまったハンナを忘れられないダニロは高級キャバレー「マキシム」に通って憂さ晴らしをします。ちなみに「マキシム」って、フランス語版『めぞん一刻』の音無惣一郎の名前です。終盤、五代が就職浪人した時に、キャバレーでバイトすることになりますが、失意の主人公がたどり着く所、という意味で一緒ですね。

亡き惣一郎と音無響子

音無響子は、五代とゴールインするまで籍を抜かなかったので、死してなお響子の夫でありつづける惣一郎です。響子の中ではずっと高いウェイトを占めていますし、五代とゴールインした後も響子の心の中には生き続けています。

惣一郎に操を捧げるという一途な想いが、処女以上に清純な音無響子像を作り上げているし、結果として音無響子の女性としての魅力を深めている所がありますね。しかも響子は20代前半でますます女ざかりとなっていくわけですから、これぞ理不尽としか言いようがありません。

そんな状況で、どう考えたって簡単に成仏できるとは思えませんよね。

第8話「惣一郎の影」で、響子は「惣一郎さんはまだ死んでません!」 と言っています。これもヒントです。

亡き惣一郎と五代

響子が惣一郎を想う場面は何度も出てくるのですが、惣一郎が響子どう思っていたのかは、ほとんど出て来ません。(惣一郎の日記のエピソードは唯一の例外。)

響子に言い寄ってきた男には決して顔を見せることはありません。五代は、何度か惣一郎の写真を見ようとしますが、惣一郎は五代に顔をみせたくないかのようです。

響子のこころの中にいるのは勿論ですが、それだけじゃないって所でしょうか。

読者に対しても顔は黒塗りされていて、結局最後まで描かれることはありませんでした。ミステリアスだし、却っていろいろな想像を掻き立てられますね。

亡き惣一郎は存在感はあるのですが、直接何かしてくることはありません。『めぞん一刻』はあくまでリアルに描かれています。でも、響子を守っているという点ではヒントは沢山ありますね。犬との関係も分かりやすいです。

現在進行形の見えない悲劇

惣一郎が成仏していないと考えるなら、惣一郎と響子の関係は過去の悲劇ではなく『めぞん一刻』の最後まで、ずっと続いていることになります。一方、五代と響子はハッピーエンドに向かっているんです。だから『めぞん一刻』は「喜劇」と「悲劇」のどっちなの?と聞かれたら、「喜劇」と「悲劇」が同時進行してるってことになるんです。うーん、すごいですね。

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頂点にいて無敵。でも何もできない惣一郎

亡き惣一郎は、『めぞん一刻』世界の頂点にいて、恋愛関係でも頂点にいます。

第7話「春のわさび」での五代の名セリフ「死人は無敵だ」でも、響子が忘れない限り、亡き惣一郎は乗り越えられない存在として語られています。

でも頂点にいても惣一郎には肉体がないんです。だから響子との想いがいかに深かろうと、悲劇になることは最初から決まっています。それはもう絶対的で、どんなにあがいても変えられない運命です。まさに鳥肌モノのインスピレーションですよね。

犬の惣一郎がいるじゃないか、と思うかも知れませんけど、本当に犬なので限界が。響子の話し相手が限界です。第8話「惣一郎の影」では、誤解した五代に思いきりビンタを食らわせてますし、第59話「梅酒婆あ」では梅酒で酔った惣一郎(犬)にひざ枕していますが、響子にとってはさすがに犬じゃ代わりにならないんです。そのことを何度も描いているので、大事なポイントってことですね。響子にとって、犬の惣一郎は抱いて気を紛らわす、なんて存在じゃないんです。

梅酒と惣一郎(犬)

亡き惣一郎と一刻館

亡き惣一郎と一刻館の時計との関係も気になりますね。

原作では3回だけ違う時刻を指します。例えば第103話「犬が好き」PartⅡでは、響子が暴走して三鷹のプロポーズにOKの返事をしようとします。でも三鷹は犬たちに邪魔されて、響子との待ち合わせ場所にたどり着けませんでした。三鷹と結婚して響子が一刻館を出ていってしまう危機の時に、一刻館の時計が10:10を指しています。既に犬っていうヒントもあるので、亡き惣一郎と一刻館の時計は関係ありそう、と連想できますね。

たまに時刻が変わる
一刻館の時計の針を動かしたのは?
第103話「犬が好き」PartⅡ

亡き惣一郎と一刻館の時計の関係は、第4話「暁に鐘は鳴る」もヒントですね。そもそも『めぞん一刻』で一番時間を止めたいのは誰なんだろう、と考えると想像つくところですよね。

ところで他にも『めぞん一刻』っていろんなミステリーがでてきます。

例えば、響子の「偶然目撃」。五代が響子に不義をはたらく時、かなりの確率で響子が決定的瞬間を目撃しています。それって考えようによっては、亡き惣一郎が仕組んだのかも知れませんよね。そのあと大抵ケンカになってますし、笑。

さて、どこまで亡き惣一郎がかかわっているのか、そこがなかなか難しい所ですね。ヒントが描かれていない場合は、関係していないことにしておこうと思います。そうしないと、「偶然」がみんな亡き惣一郎の仕業(しわざ)になりそうなので。

犬の惣一郎

響子が一刻館に連れてきた犬です。「惣一郎さん」名前の由来は、第35話「ふりむいた惣一郎」を読むと分かります。

惣一郎(旦那)と同じで、食べ物が大好き。特に焼き鳥に目がありません。

犬の惣一郎

初期は、亡き夫の惣一郎の代わりに響子の相談相手をしているシーンも多いです。もちろん、ただの犬なので答えを返してくれるわけではありませんが…

惣一郎に相談
惣一郎(犬)に相談する響子
第9話「アルコール・ラブコール」

『うる星やつら』の「コタツ猫」や「純情ぎつね」とは違って、『めぞん一刻』はリアルなファンタジーなので惣一郎(犬)は表面的にはただの犬以上の存在ではありません。でも本当にただの犬かと言えばそうとも言い切れないところも。

犬が苦手な三鷹は、惣一郎のような大型犬を一番苦手としています。対する惣一郎は三鷹になついていて三鷹を見るとすぐに抱きついてきます。どちらかというと襲っているように見えますけどね。

三鷹を襲う(?)惣一郎

犬の惣一郎は「狂言廻し」ということです(「めぞん一刻考」)。能の一種の「狂言」で生まれた言葉ですが、Wikipediaで調べると色々な意味があって定まっていないようです。

犬の惣一郎は、見えない亡き夫の音無惣一郎に対するヒントを与えるような役回りでしょうか。 原作では惣一郎と書く時、惣一郎(旦那)と惣一郎(犬)という風にルビがふってあります。ルビがあっても読者向けなので、五代には分かりませんけど。

でもルビがなければ、響子がどちらの惣一郎のことを言っているのか本当に分かりません。意図的にわからないようにしているシーンも多いです。どちらであっても意味が通じる時もあり、亡き惣一郎と犬の惣一郎が重なったような不思議な感覚です。そういう意味で「狂言回し」だし、ホントに巧妙な仕掛けなんですよね。

惣一郎を探す響子
惣一郎(犬)を探す響子。でも、このシーンにルビはなく、必死で亡き夫を探しているみたい。
第35話「ふりむいた惣一郎」

この有名なシーンでは、犬の惣一郎に加えて、響子には五代が一瞬亡き惣一郎に見えたってわけです。つまり響子は一瞬ですが犬の惣一郎と亡き惣一郎の両方を見つけてしまったんです。

亡き惣一郎、犬の惣一郎、五代が重なり合っていて、三者共演となっています。すごいインスピレーションですね。

音無のじいさん

正式な名前は分かりませんけど、「音無のじいさん」と呼ぶことにします。音無惣一郎の父なので「じいさん」では無いのですが、見た目はその方があっている気がします。

響子が通っていた女子高校の理事をやっているなど、結構立派な人なんです。一刻館も音無家の財産ですから、なかなかの資産家かも知れませんね。

惣一郎の父で未亡人になってしまった響子に理解を示している唯一の人物なのですが、それでも惣一郎の死の直後に「響子さんこれからどうする?」と聞いていたり、早いうちから響子が再婚を考えるように諭(さと)しています。未亡人の話とか、名ゼリフも多いですね。

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■更新日:2019/12/01

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