1980年代の名作漫画(アニメ)『めぞん一刻』(高橋留美子氏原作)のまとめサイトです。

深読み!『めぞん一刻』

「メリー・ウィドウ」と『めぞん一刻』

レハールの「メリー・ウィドウ」は1905年に作曲されたオペレッタです。メリー・ウィドウとは「陽気な未亡人」という意味。 『めぞん一刻』と同じですね。色んな意味で『めぞん一刻』に影響を与えていると思います。

一番の証拠はキャバレーですね。「メリー・ウィドウ」のヒロインは大金持ちと結婚してしまいます。振られた主人公はキャバレーに入り浸ります。 なので、終盤五代がキャバレーの呼び込みでバイトするのは、「メリー・ウィドウ」へのオマージュでしょうね。

また、「メリー・ウィドウ」は20世紀後半のオペレッタの元祖でもあり、ミュージカルにつながっていきます。くっつきそうでくっつかないラブコメの元祖みたいな要素も持っています。『めぞん一刻』は洋の東西を問わず、色々な作品から影響を受けていて、しかも読めばそのヒントが載っているんですよね。

「メリー・ウィドウ」の超あらすじ

「メリー・ウィドウ」はヨーロッパでは非常に人気があるオペレッタなので、きちんとしたあらすじは調べればすぐ探し出せます。

ここでは大雑把に、超あらすじを書いてみます。といっても登場人物が多くて簡略化しにくいんですけど。

ヒロインが大金持ちと結婚してしまう

主人公はダニロでポンテヴェドロという小国の公使館に勤めています。ヒロインはハンナ。ダニロとハンナは恋人でした。しかしハンナは老銀行家グラヴァリと結婚してしまいます。

その理由は書かれていません。老人とは言え結婚すればパリで優雅な暮らしができるわけで、『めぞん一刻』でもよく出てくる「女の打算」ってことかも知れませんね。

ハンナが忘れられないダニロは高級キャバレー「マキシム」に通って憂さ晴らしをします。ちなみにマキシムって、フランス語版『めぞん一刻』の音無惣一郎の名前ですね。

8日で未亡人に。大金を手に入れたヒロイン

ハンナは半年どころか、たったの8日で未亡人になりますが、莫大な資産を手に入れます。

え、それってどちらかというと事件でしょ。ハンナって実はやばくない?なんか事件性が高い気がするけど、笑

そして若い未亡人ハンナには沢山の男が言い寄ってきます。でもほとんどはお金目当て。

一方、ダニロはポンテヴェドロ公使館に務めていました。(ポンテヴェドロはバルカン半島の小国モンテネグロに似ていて、この国を想定しているんじゃないかと言われています。)

ハンナが手に入れた大金は、ポンテヴェドロ一国の経済を左右するほどの大金です。ポンテヴェドロ公使のミルコ男爵は、元恋人のダニロとハンナをくっつけようと画策します。

ハンナとダニロの再会

ハンナの周りはお金のことばかり。言い寄ってくる男もお金目当て。そんななかで、元恋人のハンナとダニロが再会します。しかし、結婚のことやお金のこともあって、二人は素直になれません。

舞踏会でハンナは言い寄ってくる男たちを差し置いてダニロを相手に選びます。 ダニロはお金目当てだと思われるのが嫌で、ハンナの相手をする権利を他の男に譲ろうとします。そして「愛してるとは言わない」と誓います。

ハンナとダニロが二人でいるシーンは至る所にあり長いのですが、お互い意地を張り合ってケンカになってしまいます。

東屋にて

浮気中のカミーユとヴェラシンヌが東屋に入ります。ヴェラシンヌはミルコ男爵の妻です。 ミルコ男爵にばれないよう、公使館書記のニグーシェはハンナを東屋に入れて、ヴェラシンヌと入れ替わります。

東屋から出てきたのは、ハンナとカミーユ。ここでハンナはカミーユと結婚すると宣言します。失意のダニロはその場を去りキャバレー「マキシム」に向かいます。

しかし、ハンナはダニロの様子を見て、彼がまだ自分を愛していることを確信します

このシーンは、第89話「体育祭の指導と管理」を連想してしまいます。筋書きは大分違いますけど。

ハンナ・グラヴァリ邸のサロンにて

キャバレー風に改装したサロン

ハンナはグラヴァリ邸のサロンをキャバレー「マキシム」そっくりの内装にして、ダニロを待ちます。

ダニロは祖国ポンテヴェドロからの電報を受け取ります。ハンナがカミーユと結婚したら、国が破産するという内容でした。その後、ダニロは、ハンナがカミーユと結婚すると宣言したことは嘘だったと知ります。

それでもダニロは、ハンナに告白しません。ダニロはお金目当てでハンナと結婚したくはないのです。

ハンナは、夫の遺言を読みます。再婚すると全財産を失うというのです。

それを聞いたダニロは、ついにハンナに告白します。(キャバレー風の部屋でプロポーズって凄いですね、笑)

しかし、その遺言には続きがあって、「財産は全て新しい夫のものになる」というものでした。

メリーウィドウと『めぞん一刻』

さて、かなりはしょったあらすじですが、いくつか『めぞん一刻』との共通点を連想したのではないでしょうか。

ただ、いくつかの違いがありますね。

ハンナと音無響子

ハンナはダニロを捨てて、金持ちと結婚。その上、8日で未亡人になってしまい、しかも亡き夫を思い出すシーンが全然ないという…

ハンナがお金目当てで結婚したとしても、本当に少しも好きじゃなかったのかも。なんてひどいヒロインなんだって感じです。でもダニロは、そんなハンナがまだ好きで、意地は張るものの結局全部許してしまいます。

そういう意味では響子は三鷹と結婚しなかったけれど、五代も三鷹も好きだったというのは、そのほうが自然で良いのかも知れませんね。

音無響子はズルい女って言われますけど、ハンナはレベルが違うみたいです。

元夫の老銀行家グラヴァリって…

一方、老銀行家グラヴァリは、若いハンナが自分が死んだ後に再婚しても困らないように、遺書をハンナの都合の良いように書いているという…なんていい人なんでしょう。

欧米の結婚観の違いもあるかも知れません。もともとヨーロッパは女性の地位が低いと言われます。アダムとイブだって、イブはアダムのために創造されたわけですし。当時はまだ男性が女性を所有するような感じだったかも知れません。

あるいは単にストーリーが練り込み不足なだけかも。「そこは突っ込むな」ってところかも知れませんね、笑(大体、大劇場でやるオペラの筋書きなんてこんな程度ですよ)

元夫の財産が二人の邪魔する

ダニロからすれば、もともとハンナは本気の恋人だったのに、ハンナは金持ちの老人を選んだんですよね。その経緯や理由を知りたい気がしますが、それは出てきません。

なので、言ってみれば財産は元旦那の象徴で、ハンナが裏切ったことの象徴みたいなもの。確かにダニロとしては「絶対お金目当てで結婚するもんか」、と意固地になっても不思議じゃないですね。

最後、ハンナはダニロを理解して、再婚すると元夫の財産を失う、と言ったので告白できました。でも、元夫の財産は結局ダニロのものになってしまいハッピーエンドなのですが、ダニロ的にはそれで良かったんでしょうかね。

第3幕ではダニロは、もうハンナを許していて、告白するきっかけを探していただけかも知れませんけど。オペレッタって2時間程度でアリア(音楽)も入るので、長編漫画のようには行かないですね。

『めぞん一刻』では、逆に五代は就職できず、お金がなくて響子にプロポーズできません。これは逆パターンですね。

『めぞん一刻』とキャバレー

キャバレー「マキシム」風に改装したサロン

メリー・ウィドウに出てくる高級キャバレー「マキシム」。失意の主人公が最後にたどり着くところって意味では、共通点が見えますね。

『めぞん一刻』の場合、高級店じゃないので、なお五代の没落ぶりが強調されるのですが、キャバレーで保父という天職を見つけてしまうのが凄い所。

また、第3幕でダニロが告白したのはキャバレー風に改装されたサロン。五代が響子に初めて目を見て告白したのは、キャバレーのバイトの合間。

『めぞん一刻』は長篇なので、キャバレーは本当に上手く使われていて色々なエピソードを展開していきます。でもメリー・ウィドウが無ければきっとキャバレーは登場しなかった気がします。

『めぞん一刻』のキャバレー「バニー」

まとめ

TV放送当時、『めぞん一刻』は「メリー・ウィドウ」の真似、みたいに言われたことがありました。確かにインスピレーション元の一つになっているのは間違いないし、夏目漱石「こころ」よりも強い影響を感じます。

でも、こんな有名なオペレッタを真似したら、すぐにバレることは明らか。

インスピレーションの元になっていますが、「メリー・ウィドウ」とはメインテーマが全く違いますね。特に初期の音無響子は惣一郎に操を立てて、悲劇性を強調しているところなんて、さすが高橋留美子作品です。

「メリー・ウィドウ」でも『めぞん一刻』でもお金は大きなテーマになってしますけど、『めぞん一刻』のメインテーマではありません。五代と響子のくっつきそうでくっつかない関係性も、メインテーマとまでは言えないと思います。

そもそも『めぞん一刻』のメインテーマって何なの?と考えると、強いインピレーションを感じるし、恋愛自体の本質みたいなものを描いていて深いな、と思います。

『めぞん一刻』って、これだけ自己説明的なセリフが多くて、一見分かりやすそうな作品だけれど、一番大事なところはヒント程度しか描かれていない気がします。筆者の意見はこのサイトの中にいくつか書きましたし、何より原作をしっかり読めばきっと分かるので、ここでは書かないことにしたいと思います。

「めぞん一刻」アニメ版
VOD:ビデオオンデマンド Amazonプライム(一話110円)

■更新日:2019/12/05

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