1980年代の名作漫画(アニメ)『めぞん一刻』(高橋留美子氏原作)のまとめサイトです。

深読み!『めぞん一刻』

第106話「開かれた扉」第107話「閉じられた扉」

犬に襲われて調子をくずし、何日も伏せってしまう三鷹。響子はお見舞いに向かいます。 五代は響子のあとをつけて三鷹のマンションへ。そこで九条明日菜と出会います。明日菜は小型犬のサラダちゃんを探しています。
サラダちゃんは、響子と一緒に三鷹の部屋へ入り込んでいました。響子と三鷹が話していると、サラダちゃんは三鷹に抱きつきます。 一方、サラダちゃんを探して三鷹の部屋の前まで来た五代と明日菜ですが、犬の声が聞こえて明日菜はいきなりドアを開けてしまいます。そこで二人が見たことは…。

久々に「誤解のモチーフ」を徹底的に使っています。言葉にして説明したのに何も伝わらないもどかしさ。でも、一瞬でも目で見てしまったシーンはダイレクトに突き刺さります。響子をあきらめなければいけないと考える五代ですが、心の整理をつけようとしても難しいことでした。第32話からの連作に似た仕組みですが、内容が深まっていて『めぞん一刻』もいよいよ佳境に入ってきた感じです。

ブルーレイ:3枚目
TVシリーズ第60話 「見ちゃった!響子と三鷹がいきなりB!?」

ストーリー(あらすじ)

三鷹、明日菜の犬に抱きつかれて寝込む

前回、三鷹は明日菜とドライブしている最中に、追ってきた明日菜の犬たちに車の上から襲われて体調を崩してしまいます。そして、何日も寝込んでしまうという…。犬恐怖症にしてもひどすぎるなぁ...

寝込む三鷹

三鷹は響子が見舞いに来てくれるかも知れないと電話をかけてみることにします。
一人暮らしでろくな食事も取れていない、と聞いて響子は見舞いに行くことにします。

お弁当を準備する響子

前回までで五代は、「響子が三鷹からプロポーズの返事を迫られている」ことを知っています。

響子は前回は暴走してYESと答えようとしましたが、五代と和解したのでまたぬるま湯に。 五代がもう少ししっかりしていたら話は簡単だったんでしょうけれど、就職浪人中だし、まだやっぱ頼りない、というのもあるんでしょうね。

五代のほうも響子にプロポーズできる状況ではありませんし、止める権利もありません。 就職もできていないし、第103話「犬が好き」PartⅡでは、プロポーズの返事をする前日に響子の気持ちを察するどころか、ソープに行っていたという大失態…
そして今回の事件が起こる前から、響子が三鷹との結婚をOKすると思いこんで、すでにあきらめを付けようと悩んでいます。

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響子、三鷹のマンションへ

次の日、響子はお見舞いで三鷹のマンションへ向かいます。五代は心配してあとをつけていきます。

御見舞へいく響子
響子(心の声)「あの様子じゃ五代さん、知ってるのね...」
響子(心の声)「あたしが最初に、三鷹さんに返事を迫られて悩んでいた時に、気づいてくれたら...」

そうですね。五代が気づけたら一気に近づいたでしょうね。『めぞん一刻』では「忙しかったから」っていう言い訳は効かなそうですね。

五代は響子を本当に好きならば、表情を見れば気づきそうなもの。でも本当に好きだったのに、気づかなかったんです。でも三鷹だったら気づきそうかも...

御見舞へいく響子

さて、そのまま三鷹のマンションの玄関まで来ますが、五代は響子に声を掛けることが出来ません。ここで声をかけたら、あとをつけてきたことがバレちゃいますけどね。ストーカーという言葉は当時は無かったけれど、きっと変な目で見られますよね。

それに声をかけた所で、五代は響子を引き止める言葉がありません。うーん、これは切ないですね。実際はもろに両思いなのに、読者は知っていても五代は知りませんから…

御見舞へいく響子

ところが、三鷹のマンションへ入っていく響子に、小さな犬がついていきました。
九条明日菜の犬「サラダちゃん」です。

マンションの部屋にて

響子が三鷹の部屋に入ると、サラダちゃんも素早く入っていきました。

響子「なにか、通り抜けていったような…...」

響子はお弁当を渡して帰ろうとしますが、案の定、三鷹に引き止められます。

逃げるんですか
三鷹「逃げるんですか」
響子「え...」
逃げるんですか

響子は、三鷹に引き止められてこんな表情。引き止められると思っていたし、内心は引き止めてもらいたかったもかも。

このエピソードのアニメ版の表情って、本当に良いですね。微妙な変化を描き分けていて、ベスト3に入るんじゃないでしょうか。

一方、マンションの入り口では五代と九条明日菜が遭遇します。 明日菜も三鷹が寝込んでしまったと聞いてやってきたのです。 でも、犬のサラダちゃんが居なくなってしまったので、五代に見なかったかと聞きます。

九条明日菜と五代

五代は響子と一緒に犬が入っていったのを見ていました。犬を探しに五代と明日菜は三鷹の部屋に向かいます。

三鷹の部屋では、響子と三鷹が話をしていましたが、そこでサラダちゃんが三鷹に飛び乗ります。三鷹は失神して目の前にいた響子に抱きついてしまいます。

三鷹と響子の決定的瞬間 三鷹と響子の決定的瞬間

ちょうど三鷹の部屋の前まで来ていた五代と明日菜ですが、犬の鳴き声がして思わず明日菜が玄関のドアを開けてしまいます。そして二人は三鷹と響子が抱き合っているのを思いっきり目撃してしまいます。

三鷹と響子の決定的瞬間

普段は響子の得意技である「偶然目撃」ですが、今回の五代と明日菜の「偶然目撃」はそれ以上の決定的瞬間でした。五代と九条明日菜は、あっけにとられつつベンツに乗って帰っていきます。

五代に見られてしまった響子は三鷹を振り払って追ったのですが、間に合いませんでした。

坂本の家で

三鷹と響子が抱き合っていたところを目撃した五代は、もう二人は深い関係なのだと誤解します。そして、坂本の家に泊まり込み、一言も発さずずっと悩みつづけることに...

響子は一刻館に戻りますが、五代は帰ってきません。

響子

説明すれば、分かってくれる。そうですね。でも『めぞん一刻』の世界観ってそんなに甘くは無いんです。 どうでもいいことは瞬時に噂になって伝わるのに、本気であるほど伝わらない
言葉って本当に無力ですね。抱き合っているのを一瞬見ただけで、もう言葉で説明したって伝わらなくなってしまう。

原作では五代は随分いろいろと考えています。

坂本の家で

ここまで考え抜いて、五代はもう心の整理をつけはじめてしまったようですね。

響子は、もう五代が坂本の家にいることを予想していて、電話します。

坂本「五代ですか、いないと言ってくれ、と言っとります」
響子「あの、帰ってくるように伝えてください。帰ってきたらちゃんと話しますから...」

喫茶店にて、こずえちゃんと...

五代は喫茶店でこずえちゃんと会います。こずえちゃんは一刻館に行って、一の瀬さんから「三鷹さんと響子が結婚する」と聞き、五代にもそう伝えます。

楽しそうなこずえちゃん。でも、実際のところは今一番かわいそうのはこずえちゃんなんですけど...誤解を全部解くことが出来たならそうなりますよね。 まったく気がついていない様子で、まるで他人事のように話しています。

五代、こずえちゃんと

うーん、ここまでくると、天真爛漫(てんしんらんまん)なこずえちゃんが不憫(ふびん)に思えてきますね。

五代のほうも、再度、三鷹と響子が結婚すると聞いて、もう確信に変わっている雰囲気です。

一刻館にて

五代はもう完璧に誤解しているので、響子が話す内容はきっと三鷹との結婚のことだろうと、完全に先走って考えています。

五代と響子

五代が帰ってくると、走って迎えに行く響子。ですが響子はなかなか言葉が出てきません。

五代「おめでとうございます。管理人さんも人が悪いんだから、隠すことなかったのに。」

五代は部屋に入ります。しばらくして、響子が部屋をノックします。

響子「あのことですけど...」
五代「もういいんです。別に気にしてませんから」
<中略>
響子「ちょっと五代さん、なにをわけのわからないこと…」
五代「俺、大丈夫ですから。へんな気を使わないでください。もうあきらめましたから。」
響子の言い訳
五代「か、管理人さん、おれ、もうあなたのこと...なんとも思っていませんから...」
五代と響子

「あなたのこと、なんとも思っていませんから...」と、ついにいってしまった五代。その言葉を聞いて、響子は立ち去ろうとします。思わず五代は部屋から出てきます。

五代「おれのことなんか気にしないでください。かえってみじめで...」
響子「あたしがいなくても、大丈夫なんですね?」
五代「…。だ、大丈夫です。」
響子の涙

五代にそういわれた響子は、振り向いて一筋の涙を流した後、帰っていきます。余計に響子の気持ちがわからなくなる五代でした。

言葉にしたのに伝わらない

このエピソードは、第39話「事件」からの五代の家出のエピソードとほとんど同じ仕組みです。誤解とすれ違いのモチーフで二人の間は、どんどん離れていきます。でも、第30話よりもずっと巧妙ですね。

今回、響子は誤解を解くように言葉でちゃんと説明しました。でも五代は、三鷹と響子が結婚することを信じていて、坂本の家で一人で心の整理をつけようと考え抜いた後なので、その言葉は頭に入ってきません。

伝わらないという点では、第39話「事件」の時よりもひどくなっているかも・・・

響子のことを考えて、無理に明るく振る舞う五代。その上、響子に「あなたのこと、なんとも思っていませんから...」とまで言ってしまいます。これって五代としては、三鷹と結婚するであろう響子を気遣っていった言葉なわけだから、本気の裏返しですよね。

二人の仲は縮まっているはずなのに、お互いのことを考えるほどに逆に溝が深まっていくという不条理・・・この溝を埋めるにはやっぱりあと3巻分かかるのかも知れませんね。

マンガ(アニメ)でなければ描けない

それにしても、ここまで徹底的に誤解のモチーフを使うなんて、「言葉で伝えることの限界」を表現したいところもあるんですかね。マンガは細かい心情表現は苦手と言われています。第35話「ふりむいた惣一郎」のときも似たようなことを考えましたけど、高橋留美子先生は、小説でなくあえてマンガを選んで、繊細な描写にチャレンジしているってことなんでしょうね。

響子の涙
響子の涙のメッセージは鮮烈

TV版アニメ、決定的瞬間に「サンマ売り」

TV版アニメでは、決定的瞬間を目的した時に「サンマ売り」の声が聞こえます、笑。
シーンとした瞬間に遠くの音が聞こえる。いい演出ですけど、時代を感じますね。もっとも豆腐売りとかは結構いましたが、サンマ売りは見たことないです。

でもこのエピソードのTV版アニメの完成度ってとっても高いと思います。特にキャラクラーの表情の変化は素晴らしいです。キャラの顔自体も面長すぎず自然ですし、とても見ごたえがあります。

響子の涙
「めぞん一刻」アニメ版
VOD:ビデオオンデマンド Amazonプライム(一話110円)

■更新日:2019/11/02

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